「技術・人文知識・国際業務ビザ」は、日本において専門的な知識、技術又は外国人特有の感性を必要とする業務に従事することができる在留資格です。
技術・人文知識・国際業務ビザの取得に関しては、就こうとする職に関連する学歴又は経験が必要とされるのがその特徴です。
ここでは、「技術・人文知識・国際業務ビザ」について、どのような場合に取得することができる?、どうやって申請する?、といった疑問にお答えします。

【このページの要点】
- 技術・人文知識・国際業務ビザの要件:①外国の大学以上若しくは日本の専門学校以上、②又は技術・人文知識分野は10年以上、国際業務は3年以上の実務経験を有すること
- 技術・人文知識・国際業務ビザ申請の流れ
- 技術・人文知識・国際業務ビザ申請に必要な書類
技術・人文知識・国際業務ビザとは
「技術・人文知識・国際業務ビザ」とは、日本において専門的な知識、技術又は外国人特有の感性を必要とする業務に従事することができる在留資格をいいます。
かつては、「技術ビザ」と「人文知識・国際業務ビザ」は別々の在留資格として管理されていましたが、平成26年の出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という。)改正により、これらが統合され、現在の在留資格「技術・人文知識・国際業務」とされました。
しかし、「技術・人文知識・国際業務ビザ」は包括的な在留資格であるため、1つの在留資格ではあるものの、「技術・人文知識」類型と「国際業務」類型で上陸許可基準が異なるなど、「技術・人文知識・国際業務ビザ」を理解するためには、「技術」、「人文知識」、「国際業務ビザ」のそれぞれの類型ごとに行うことのできる活動と適用される省令の内容を押さえておくことが重要となります。
ここで、よく混同されがちな「ビザ」と「在留資格」について、説明をしておきます。
「ビザ(査証)」とは、外国にある日本の大使館や領事館がパスポートをチェックし、日本への入国は問題ないと判断した場合に発給されるもので、日本への入国に関する認定の裏書をさします。ただし、日本への入国にあたってこの「ビザ」は必要なものですが、実際に上陸を許可するか否かは、日本の空港や港で上陸時に行われる上陸審査の際に入国審査官が決定します。入国審査官はパスポートに貼られたビザを確認し、上陸を許可するのであればビザに見合った「在留資格」を付与して外国人を上陸させることになります。その時点で「ビザ」は使用済みとなり、上陸時に与えられた「在留資格」が上陸後の外国人が日本に在留する根拠となります。
また、「ビザ申請」と国内で一般的にいわれるものについては、正確には「在留資格認定証明書交付申請」のことを指します。「在留資格認定証明書」とは、法務大臣が発行する、当該外国人が日本で行おうとする活動が上陸のための条件に適合すると判断した証明書をいいます。この証明書を事前に取得し、在外公館でビザ発給を申請する場合、在留資格に関する上陸条件についての法務大臣の事前審査を終えているとして扱われるため、ビザの発給が迅速に行われることとなります。外国人の入国の大半はこの方式を利用しています。
在留資格認定証明書交付申請は、当該外国人、又は、行政書士、弁護士などの代理人が、当該外国人の居住予定地を管轄する出入国管理局(支局・特定の出張所を含む)に申請書を提出して行います。
ただし、本サイトでは、特に断りの無い限り、「在留資格認定証明書交付申請」については一般的な呼称である「ビザ申請」という言葉で言い表します。
技術・人文知識・国際業務ビザ取得の要件
在留資格該当性と上陸許可基準適合性
技術・人文知識・国際業務ビザの取得要件を検討する場合、これらのビザの取得には、日本で在留するための在留資格該当性と日本に上陸を許可されるための上陸許可基準適合性の双方が求められていることに留意する必要があります。
上陸許可基準については、厳密にいうと、上陸許可及び在留資格認定証明書交付にあっては直接の許可要件であるのに対し、在留資格変更許可及び在留期間更新許可にあっては直接の許可要件ではなく、許可要件たる相当性の重要な判断要素であるという点に注意が必要ですが、ここでは、ビザ取得申請の際すなわち在留資格認定証明書交付申請の際の要件について解説します。
では、ビザ取得の要件について、技術、人文知識、国際業務のそれぞれ類型ごとに見ていきましょう。
「技術」及び「人文知識」類型について
技術・人文知識・国際業務ビザにおける「技術」及び「人文知識類型」については、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に主として従事する活動」を行う場合にビザを取得することができます。
このように、入管法においては大きな枠で規定されますが、実際のビザ申請においては、就こうとする業務内容と、後述する学歴や実務経験を満たす申請人の学修内容又は実務経験内容が関連性を有することが重要となります。
そして、「技術」及び「人文知識類型」のビザ取得には、上陸許可基準省令によって学歴・実務要件、報酬要件が求められます。
【学歴・実務要件】
従事しようとする活動について、以下のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を習得していること。
- 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
- 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る)したこと。
- 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
- (情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合)法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有していること。
【報酬要件】
日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
「国際業務」類型について
技術・人文知識・国際業務ビザにおける国際業務類型については、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に主として従事する活動」を行う場合にビザを取得することができます。
「国際業務」のビザ取得には、上陸許可基準省令によって学歴・実務要件、報酬要件が求められます。
【業務内容要件】
翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
【学歴・実務要件】
従事しようとする活動について、以下のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を習得していること。
- 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。
- 大学等(大学、大学院、短大及び高等専門学校)において、従事しようとする業務に必要な科目を専攻し、卒業したもの又は本邦の専門学校を修了し、専門士の称号を得たもの。
- (翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合)大学を卒業していること。
【報酬要件】
日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
技術・人文知識・国際業務ビザ申請に関するその他の注意点
他の専門的就労ビザの対象となる場合
入管法別表第1の2の表「技術・人文知識・国際業務」下欄かっこ書きの規定により、申請人が従事しようとする活動が、「教授」、「芸術」、「報道」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「企業内転勤」、「介護」、及び「興行」のいずれかに該当する場合、技術・人文知識・国際業務ビザを取得することはできないため、ビザ申請を検討する場合は、これらの在留資格に該当することが無いか注意が必要です。
「技術」及び「人文知識」類型と「国際業務」類型における学歴要件の違い
「技術」及び「人文知識」類型と「国際業務」類型における学歴要件には、「技術」及び「人文知識」類型においては、本邦の「専修学校の専門課程を修了したこと。」が要件の一つとされ、「国際業務」類型においては、本邦の「専門学校を修了し、専門士の称号を得たもの。」が要件の一つとされています。
ここでまず、専修学校と専門学校の違いについてですが、専修学校と専門学校ともに学校教育法に規定され、専修学校とは、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として、組織的な教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く。)であって、修業年限が一年以上であること、授業時数が文部科学大臣の定める授業時数以上であること、教育を受ける者が常時四十人以上であるものをいいます。
そして、専門課程を置く専修学校は、「専門学校」と称することができると規定されていることから、「技術」及び「人文知識」類型において「専修学校の専門課程を修了したこと。」については、文字通り専修学校の専門課程を修了した者はこれにあたるほか、専門課程を置いた専修学校が「専門学校」と名乗っている場合には、「専門学校の専門課程を修了した」者もこれにあたることとなります。
これに対し、「国際業務」類型においては、本邦の「専門学校を修了し、専門士の称号を得たもの。」とされることから、「専門士」の称号を得たものか否かが要件を充足するか否かを分けることとなります。なお、「専門士」とは、専門学校のうち、修業年限が2年以上等の要件を満たしたもので、文部科学大臣が指定した課程の修了者には、専門士の称号が付与されます。
以上のとおり、専修学校、専門学校、専門士の称号については、ビザ申請の際にも混同することのないよう確認する必要がありますが、技術・人文知識・国際業務ビザでの就労を目指して日本の専修学校等に進学を検討される方にあっては、自分の目指す就職先の類型ごとにどのような課程のある専修学校へ進むべきかをしっかりと確認することが重要です。
「専門士」に関する指定状況は、>文部科学省HP(専門士の称号を付与する専修学校)をご覧ください。
雇用主の事業が安定性、継続性、適正性を有するか否か
ビザ申請に対する審査は、申請人が雇用契約等を行う雇用主の事業についても及びます。具体的には、その雇用主の事業が適正なものかどうかという観点から、事業に必要な許認可等を得ているか否かといった点、安定性・継続性の観点からは、少なくとも在留期間に対応する期間において事業主が事業を継続する意思と能力を有しているかといった点が審査対象となってきます。
このような事業主の状況の確認については、ビザ申請の審査対象である点を除いても、申請する外国人の方が安全に働くうえで欠くことのできない非常に重要な視点であるといえます。
技術・人文知識・国際業務ビザ申請の流れ
技術・人文知識・国際業務ビザの申請については申請人が外国にいる場合と国内にいる場合がありますが、留学生が就職する場合など国内にいる場合は、現在保有する在留資格の変更申請を行うこととなります。
下記流れは、外国にいる申請人が新規ビザ申請をする場合の流れです。
申請人と雇用主の雇用契約締結
雇用契約書は、在留資格認定証明書交付申請の添付書類ともなるため、事前に雇用契約を締結する必要があります。
出入国管理局に技術・人文知識・国際業務ビザ申請
申請者の予定住所地を管轄する出入国管理局の窓口で申請します。
申請取次者として出入国管理局の承認を受けた行政書士・弁護士は申請を取り次ぐことができます。
許可
在留資格認定証明書の交付後、申請取次者等は、海外の申請人に証明書を送付します。
査証申請~発給
在留資格認定証明書の送付を受けた申請人は、海外の日本政府在外公館で査証の発給を受けます。
入国~就労
日本に入国後、就労を開始します。
技術・人文知識・国際業務ビザ申請に必要な書類
技術・人文知識・国際業務ビザの申請に必要となる書類については、就職する企業の規模によって、雇用主の事業に関する必要書類が異なりますが、一般的に必要となる書類を、以下に一覧で紹介しておきます。
技術・人文知識・国際業務ビザ申請を行う場合に必要な書類一覧
- 在留資格変更申請書
- 証明写真
- 雇用契約書
- 会社概要書
- 職務内容説明書
- 学歴を証明する書類
- 実務経験を証明する書類
- 日本語試験合格証のコピー
- 住民税の納税証明書
- 就職先の登記事項証明書
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 直近年度の決算書類
- パスポート(申請人が国内にいる場合)
- 在留カード(在留資格変更の場合)
最後に
以上、技術・人文知識・国際業務ビザについて、その内容とビザ申請方法、申請における留意点を解説しましたが、出入国在留管理局に対して行うビザ申請には多くの書類の添付が必要であり、また補足説明資料なども必要となってきます。
一度不許可となると再申請はその分ハードルが上がる傾向にもありますので、ビザ申請に不安がある方は、専門家に相談することも検討されることをお勧めします。
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この記事の執筆者
高知VISAサポートセンター所長
森本 拓也
TAKUYA MORIMOTO
行政書士ライフパートナーズ法務事務所
代表行政書士、宅地建物取引士
私も、イギリス在留中には、フラット(アパート)を借りる際をはじめ、多くの現地の方にたくさんお世話になりました。
当事務所では、ビザ申請に関すること以外にも、外国籍の方の行政手続き・不動産・日常生活に関する様々なお困りごとにも相談対応が可能です。
ぜひ、お気軽にご相談ください。
- 主な担当業務
外国人のお客さまのビザ申請に関するサポートのほか、外国人を雇用する企業様の法的サポートを提供しています。 - Profile
1993年 3月 高知県立追手前高校 卒業
1993年 4月 立命館大学産業社会学部 入学
イギリス留学を経て、行政書士資格取得後公務員として約20年勤務した後、行政書士ライフパートナーズ法務事務所開設。
入管申請取次行政書士(行ー192025200024)
宅地建物取引士登録番号(高知)第005010号