「資格外活動許可」とは、現在のビザでは就労することができない仕事を行いたい場合に、あらかじめ受ける許可をいいます。
資格外活動許可が必要であるにも関わらず資格外の就労をした場合、本人に資格外活動罪に問われる可能性があるだけでなく、就労させて側にも不法就労助長罪に問われる可能性があります。
ここでは、「資格外活動許可」について、どのような場合に許可を受けることができる?、どうやって申請する?、といった疑問にお答えします。

【このページの要点】
- 留学生がアルバイトする場合には、資格外活動許可が必要。
- 資格外活動許可の要件:①原則週28時間以下、②原則として単純労働でないこと
- 留学生のアルバイトに関しては、週28時間以下であるば、単純労働も可能。
- 資格外許可申請の流れ
- 資格外許可申請に必要な書類
資格外活動許可申請とは
日本に滞在する外国人の方が、現在保有するビザ(在留資格)では就くことができない仕事(事業運営や就労)をしたい場合、現在保有するビザの変更許可を受けて新たな仕事に就くか、現在保有するビザにおいて許される活動の傍らでその本来の活動を阻害しない範囲内での事業運営や就労の許可を受ける必要があります。
資格外活動許可とは、上記のうち、現在保有するビザにおいて許される活動の傍らでその本来の活動を阻害しない範囲内での事業運営や就労を行う場合に必要とされる許可をいいます。
この許可を受けずに、違法に「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」を行った場合、その者自身には資格外活動罪が成立するのみでなく、その者に不法就労活動をさせた者にも、不法就労助長罪が成立します。
ここで特に注意したいのが、不法就労助長罪については、平成21年入管法改正により、外国人を不法就労させた雇用主が不法就労となることを知らなかった場合でも、その知らなかったことに過失が無かった場合を除き処罰を免れないこととなった点です。
ここで、よく混同されがちな「ビザ」と「在留資格」について、説明をしておきます。
「ビザ(査証)」とは、外国にある日本の大使館や領事館がパスポートをチェックし、日本への入国は問題ないと判断した場合に発給されるもので、日本への入国に関する認定の裏書をさします。ただし、日本への入国にあたってこの「ビザ」は必要なものですが、実際に上陸を許可するか否かは、日本の空港や港で上陸時に行われる上陸審査の際に入国審査官が決定します。入国審査官はパスポートに貼られたビザを確認し、上陸を許可するのであればビザに見合った「在留資格」を付与して外国人を上陸させることになります。その時点で「ビザ」は使用済みとなり、上陸時に与えられた「在留資格」が上陸後の外国人が日本に在留する根拠となります。
また、「ビザ申請」と国内で一般的にいわれるものについては、正確には「在留資格認定証明書交付申請」のことを指します。「在留資格認定証明書」とは、法務大臣が発行する、当該外国人が日本で行おうとする活動が上陸のための条件に適合すると判断した証明書をいいます。この証明書を事前に取得し、在外公館でビザ発給を申請する場合、在留資格に関する上陸条件についての法務大臣の事前審査を終えているとして扱われるため、ビザの発給が迅速に行われることとなります。外国人の入国の大半はこの方式を利用しています。
在留資格認定証明書交付申請は、当該外国人、又は、行政書士、弁護士などの代理人が、当該外国人の居住予定地を管轄する出入国管理局(支局・特定の出張所を含む)に申請書を提出して行います。
ただし、本サイトでは、特に断りの無い限り、「在留資格認定証明書交付申請」については一般的な呼称である「ビザ申請」という言葉で言い表します。
資格外とみなされる活動
では、資格外活動許可の要否が問題となる活動には、どのようなものあるのでしょうか。
まず、大きな枠組みとして、外国人の方が保有しているビザでは行うことができない収入を伴う事業運営と就労が資格外の活動にあたります。
就労に制限が無い永住ビザや定住ビザを有する方については問題となることがありませんが、留学生がアルバイトする場合や、介護ビザを有する方が建設現場で働く場合などは、資格外活動許可を取得するかビザ変更をしなければ、その活動を行うことは許されません。これらの活動(就労)は日本国内で行われる限り、その報酬の支払いを国外で受けたとしても又は外国企業が支払ったとしても同様ですので、注意が必要です。
また、収入を伴う事業の運営にあたるか否かについては、株式会社の設立(所有)など営利法人を運営する場合のみでなく、社会福祉法事などの非営利法人の運営する場合にも、収入を伴う限り、資格外活動許可を取得するかビザ変更をしなければ、行うことができない活動となります。
資格外活動許可の要件
上では、資格外とされる活動の類型を紹介しましたが、ビザ変更をしてこれらの活動を行う場合を除き、ここでは資格外活動許可が認められる要件について紹介します。
まず、結論から言うと、資格外活動として許可されうるためには、①本来の在留目的の活動の遂行を妨げない範囲内であること、②相当性があることが必要です。
よって、留学生がアルバイトをする場合に、本来の在留目的である「留学」活動の遂行を妨げるほどのアルバイトをしようとするときは、資格外活動許可を取得することはできず、留学ビザを就労系のビザに変更する必要があります。
では、この2つの要件の意味内容について見てみましょう。
本来の在留目的の活動の遂行を妨げない範囲内
この要件は、外国人が現在有する在留資格に基づく活動を今後も引き続き行っていくことを前提に、その傍らで、本来の活動に支障を及ぼさない範囲内で別の活動に従事するものでなければならないということを意味します。
この「本来の活動に支障を及ぼさない範囲内」かどうかという点については、単に時間数や収入・報酬の多寡のみで機械的に判断するのではなく、実質的に判断されるべきものとされていますが、実務においては、「留学ビザ」、「家族滞在ビザ」などの在留資格を有する者からの資格外活動許可申請に対しては、原則として週28時間以下か否かによって、「本来の活動に支障を及ぼさない範囲内」か否かが判断されています。
相当性
入管法第19条第2項は、入管庁長官が「相当と認めるとき」に資格外活動許可を許可し得ると規定されていることから、申請人が行おうとする資格外の活動自体及び行うことについての相当性が許可の判断基準となってきます。
この相当性は、外国人の行おうとする資格外の活動の内容はもとより、国内外の経済情勢、日本の出入国在留管理政策との整合性、当該外国人の入国の目的や在留状況などを総合衡量して判断されます。
このうち、日本の出入国在留管理政策との整合性という点をみる場合、現在の政策においては一定程度の技術等を要しない単純労働に従事しようとする外国人を受け入れないこととしており、資格外活動における相当性判断においても外国人が資格外の活動を行う場合であっても単純労働に従事することは、それが本来の在留資格の活動に支障をきたさない範囲であっても、原則として認められるものではないという帰結に至りやすくなります。また、実務においてもこの考え方が採用され運用されています。
ただし、留学生のアルバイト活動については、留学生の本国と日本に経済格差がある場合も少なくないなどの事情や、日本では学生が学業に支障をきたさない範囲でアルバイトを行うことが大半であるといった状況があることなどから、単純労働や現業的労働であっても、一定の条件のもとで相当性が認められ、しかも「包括的」に許可される扱いとなっています。
ここで、「包括的」とは、雇用主や業務内容が変わっても、その都度許可を受ける必要がないということを意味します。
これに対し、個人事業主としての活動や委託契約の受託など、労働時間が明確でない資格外活動に従事する場合には、包括的資格外活動許可を受けることはできず、就労業務ごとに個別的資格外活動許可を受ける必要があります。
なお、包括的資格外活動許可と個別的資格外活動許可の両方を受けることが可能です。
その他審査の際に適用される要件
以上、資格外活動許可の法律上要求される要件について説明しましたが、審査の実務上の運用について審査要領に規定される要件をここで簡単に紹介しておきます。許可を受けようとする際には、これらの審査要領に規定される要件を充足することが重要となります。
なお、以下の審査要領に規定される要件については、一般的な基準として理解する必要があり、許可されるか否かについては個々の事例ごとに判断されることに留意が必要です。
- 申請人が申請に係る活動に従事することにより現に有する在留資格に係る活動の遂行が妨げられるものでないこと。
- 現に有する在留資格に係る活動を行っていること。
- 申請に係る活動が、特定技能及び技能実習を除く、各種就労資格に該当する内容のものであること。
- 申請に係る活動が以下のいずれにもあたらないこと。
①風俗営業
②店舗型性風俗特殊営業
③特定遊興飲食店営業
④無店舗型性風俗特殊営業
⑤映像送信型性風俗特殊営業
⑥店舗型電話異性紹介営業
⑦無店舗型電話異性紹介営業 - 収容令書の発付又は意見聴取通知書の送達、通知を受けていないこと。
- 素行が不良でないこと。
- 日本の公私の機関との契約に基づく在留資格に該当する活動を行っている場合には、資格外活動に従事することについて当該機関の同意を得ていること。
留学生のアルバイトについての注意点
上記の資格外活動許可における、①本来の在留目的の活動の遂行を妨げない範囲内であること、②相当性があることの2つ要件に関して、留学生がアルバイトをする場合、一般的には週28時間以内であれば単純労働や現業的労働であっても就労することが許されることとなりますが、留学経費全体との関連から注意が必要な点を1点記しておきます。
留学生の日本での生活費については、大前提として、留学生本人の資産や奨学金、若しくは当人以外の者の支弁によって賄われることが入管政策上要求されており、アルバイトによる収入はあくまで補足的なものである必要があります。
よって、例え、週28時間以下という要件を充足するとしても、留学生がアルバイトを主たる経費の支弁手段とすることはできないということに注意が必要です。
例えば、時給1万円が支給される高度な職をこなし、この収入を主たる糧として留学生活を送るということはできないということです。
なお、留学生が、在籍する大学又は高等専門学校(第4学年、第5学年及び専攻科に限る。)との契約に基づいて報酬を受けて行う教育又は研究を補助する活動については、資格外活動の許可を受けることを要しません。
包括的資格外活動許可についての注意点
留学ビザや家族滞在ビザ、一部の特定活動ビザ(就職活動を行う者、就職内定者等)を有する者には、包括的資格外活動許可が与えられる場合がありますが、包括的資格外活動許可のもとで行う活動では次の4点に留意することが重要です。
- どの曜日から起算しても、常に週28時間以内という就労の制限時間を遵守しなければならないこと。
- 掛け持ちのアルバイトをしている場合、すべての就労先での就労時間の合計が週28時間以内でなければならないこと。
- 風俗営業が行われている「場所」で行う就労は、すべて許可の対象外である。
- 留学ビザにあっては、卒業、退学、除籍等により教育機関に在籍しなくなったときには、資格外の活動は許可の範囲外となること。
資格外活動許可申請手続きの流れ
資格外活動許可申請に対する審査には約1か月かかります。申請準備にも時間を要するため、お急ぎの場合は、専門家に依頼することも検討されることをお勧めします。
流れは以下のとおりです。
出入国管理局に永住ビザ申請
申請者の住所地を管轄する出入国管理局の窓口で申請します。
申請取次者として出入国管理局の承認を受けた行政書士・弁護士は申請を取り次ぐことができます。
資格外活動許可申請の審査には約1か月を要するため、アルバイト等の開始までに余裕をもって準備しましょう。
許可
証印シール(パスポートに貼付)又は資格外活動許可書の交付により受けられます。
手数料はかかりません。
資格外活動許可申請に必要な書類
資格外活動許可申請に必要となる書類を、以下に一覧で紹介します。
資格外活動許可申請に必要な書類一覧
- 申請書
- 当該申請に係る活動の内容を明らかにする書類
※包括許可か個別許可によって異なります。 - 在留カードを提示
※ 本人以外が、申請を行う場合には、(本人には在留カードの写しを携帯させて)、来庁する者が在留カードを持参すること。 - 旅券又は在留資格証明書を提示
- 旅券又は在留資格証明書を提示することができないときは、その理由を記載した理由書
- 身分を証する文書等の提示(申請取次者が申請書類を提出する場合)
最後に
以上、資格外活動許可申請について、その内容と申請方法、申請における留意点を解説しましたが、出入国在留管理局に対して行う資格外活動許可申請には多くの書類の添付が必要であり、また補足説明資料なども必要となってきます。
一度不許可となると再申請はその分ハードルが上がる傾向にもありますので、資格外活動許可申請に不安がある方は、専門家に相談することも検討されることをお勧めします。
当事務所では、資格外活動許可を希望されるお客様の申請を代行する>申請サポートをご用意し、お客様の資格外活動許可申請を全面的にサポートするサービスを提供しております。
無料相談にて、資格外活動の許可取得が可能か、また、問題点がある場合にどの程度是正ができるかのアドバイスをさせていただきます。
無料相談は、①電話、②メール、③オンライン(Zoom、Line等)、④来所、⑤ご自宅訪問のいずれかでご対応しております。まずは、お気軽に、お電話かメールでお問合せください。
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この記事の執筆者
高知VISAサポートセンター所長
森本 拓也
TAKUYA MORIMOTO
行政書士ライフパートナーズ法務事務所
代表行政書士、宅地建物取引士
私も、イギリス在留中には、フラット(アパート)を借りる際をはじめ、多くの現地の方にたくさんお世話になりました。
当事務所では、ビザ申請に関すること以外にも、外国籍の方の行政手続き・不動産・日常生活に関する様々なお困りごとにも相談対応が可能です。
ぜひ、お気軽にご相談ください。
- 主な担当業務
外国人のお客さまのビザ申請に関するサポートのほか、外国人を雇用する企業様の法的サポートを提供しています。 - Profile
1993年 3月 高知県立追手前高校 卒業
1993年 4月 立命館大学産業社会学部 入学
イギリス留学を経て、行政書士資格取得後公務員として約20年勤務した後、行政書士ライフパートナーズ法務事務所開設。
入管申請取次行政書士(行ー192025200024)
宅地建物取引士登録番号(高知)第005010号